スープ大辞典

昆布

日本料理において、昆布は欠かせない食材の一つです。

天然だしの素材から、食品としての活用法などが確立された昆布は、日本の食文化を支える柱の一つであるともいえます。昆布だしは、天然だしの基本ともいうべき出汁なのです。

昆布の生態・分布

昆布

昆布は、生物学上ではコンブ目コンブ科コンブ属に属する、胞子で繁殖を行う海藻の一種です。

昆布の胞子は「遊走子」と呼ばれる、鞭毛が生えた胞子で海中を泳ぎまわり生育に適した岩場に着生して成長するという性質を持っています。

昆布は宮城県以北の三陸海岸から北海道全域に渡って生息しています。

 

昆布の歴史

昆布巻き

昆布が日本の食生活に登場するようになったのは、平安時代の前後からです。この時期に日本から中国へ昆布が献上されるようになったという記述が見られます。この頃の昆布は、北海道・東北地方でしか採れないものだったので希少価値が高いものだったのです。

その後、鎌倉時代以後の戦国時代では昆布は「喜ぶ」に通じる縁起物として扱われるようになります。これは、「北前船」と呼ばれる北海道方面との交易船が就航するようになったことに起因していると言われています。

この時、関西から沖縄にまで昆布が伝わり様々な昆布の加工品や昆布料理が生み出されていったのです。

日本以外での昆布

近代において、昆布の養殖技術が確立されてからは中国などでも昆布の養殖が盛んに行われています。しかし、昆布で出汁をとるのは日本のみになっています。

アメリカなどでも昆布の近縁種は生息しているものの、昆布を食べるという文化を持った国はごく少数のようです。

流通している昆布にはどんなものがあるのか

一口に「昆布」と言っても、市場には様々なブランドの昆布が出回っています。

また、ブランドごとに昆布の種類が微妙に違うのです。

 

真昆布

高級昆布の一つで独特の甘みがあり、関西地方では出汁昆布として多く使われています。道南方面で取れるものが高級品として扱われています。

出汁昆布のほかにはおぼろ昆布やとろろ昆布などに加工されています。

利尻昆布

道北方面で採取される、出汁昆布としては懐石料理で人気の高い高級昆布です。

薄味ながらもしっかりとした味わいを持つ昆布で、出汁は透き通った色合いを持っています。

羅臼昆布

道東方面で採取される、真昆布に匹敵する評価を持つ高級昆布です。出汁は濃厚な味わいを持っていますが、色味が濃いという特徴を持っています。

出汁昆布としてだけではなく昆布茶などにも加工されます。

日高昆布

太平洋側で採取される昆布です。三石町方面で取れるので三石昆布とも言います。

出汁昆布としてよりも食べる昆布としての人気が高い昆布です。

その他の昆布

長昆布は釧路方面で採取される昆布で、加工食品などに使用されます。

細目昆布は江戸時代以前から採取されていた昆布ですが、一年しか生育しないため人気が薄くなっています。

道南方面で採取されるガゴメ昆布は、食用目的には適さないと考えられてきましたが昨今の健康食品ブームで見直され始めています。

天然だしへのこだわり

昆布

昆布はうま味成分であるグルタミン酸を含んでいることは良く知られた事実です。

しかし、昆布はグルタミン酸以外にも様々な栄養分を含んでいます。

同量の牛乳の約6倍にあたるカルシウムに、牛乳の約39倍に相当する鉄分をはじめとする豊富なビタミンやミネラルを含んでいます。


昆布に含まれるビタミン

昆布には、ビタミンA・ビタミンB1・ビタミンB2・ビタミンCが豊富に含まれています。

このうち、水溶性であるビタミンB1・ビタミンB2は昆布だしに溶け込んで疲労回復に効果を発揮してくれるのです。

昆布に含まれるミネラル

昆布に含まれているミネラルの中でも、特筆すべきはヨウ素です。

ヨウ素は代謝機能を活発にする働きを持っています。しかし、ヨウ素の過剰摂取は甲状腺の働きを阻害するので程ほどにしておきましょう。

また、昆布に含まれるアルギン酸は身体のミネラルバランスを整え、肝臓の機能を正常化する力を持っています。

知られざる昆布パワー「フコインダン」

昨今話題になったのが、昆布に含まれる「フコイダン」という食物繊維の一種です。

フコイダンは昆布表面のぬめぬめした部分に含まれていて、抗がん作用や老化防止に役立つと言う研究が発表されたのです。

フコイダンが最も多く含まれているのは、商品価値が見出されていなかったガゴメ昆布であることもわかっているのです。

昆布のだしのとり方を紹介!

昆布から天然だしを上手にとる方法とはどのようなものなのでしょうか。

用意するもの

昆布…水1リットルに対し30g

昆布は真昆布でも羅臼昆布でも利尻昆布でも養殖昆布でも何でも構いません。また、好みに合わせて昆布の量は調節してしまっても構いません。

昆布だしのとり方

まず、昆布の表面を湿らせた清潔な布巾で軽くふき取ります。あまり強く擦ると表面に浮き出たアミノ酸が削り取られてしまうので昆布を湿らせる程度で構いません。

水気を与えて戻した昆布は鍋に汲んだ水に浸し、2時間以上はそのままにしておきます。時間を短縮したい場合はそのまま鍋を火に掛けて、中火で沸騰する手前まで煮出します。70℃を越えると昆布からはアルギン酸が析出されて、出汁がぬるぬるした舌触りになり風味が損なわれてしまいます。

沸騰直前に昆布を取り出して昆布だしの完成です。

出汁をとった後の昆布の活用法は?

出汁をとった昆布には、まだグルタミン酸が残っています。

出汁をとった後の昆布と鰹節を使って取るのが二番だしです。他にも、昆布の出し殻は佃煮にしたり電子レンジなどで水分を飛ばしてミキサーに掛けてふりかけにしたりと、様々な料理に活用することが出来ます。


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